今月のNetflix新作からおススメをご紹介します。
“なにかを始める勇気”を、静かにくれる30分ドラマ
ここが世界の最北端

あらすじ──北の果てで始まる、静かで強いリスタート
夫との別れをきっかけに、若きイヌイットの母・シアジャが見知らぬ“自分の人生”を歩みはじめる。
舞台は、カナダ北極圏の小さな町、アイス・コーブ。彼女の一歩は、不器用だけれど、まっすぐで、どこか愛おしい。

なぜ、惹かれるのか
「母や妻である前に、ひとりの人間であること」。
どこかで耳にしたことのあるテーマだけれど、ここでは景色も価値観もまったく違う。極寒の地で、イヌイット文化の中に息づく“現代”が、意外なほど鮮やかで、温かい。
冒頭、私たちが抱いていた“狩猟民族”のイメージは、すぐに裏切られます。
スタイリッシュな装い、カラフルなリップ、明るく暖かい室内。スマートフォンを手に、笑い合う女性たち。
「違う世界のはずなのに、どこか自分たちと似ている」。
けれど、物が十分でない環境や、仕事が限られているというリアルな“足りなさ”が、なぜか人間をしなやかに、前向きに見せてくれる。そのバランス感覚がとても美しいの。

リアルであるということ
主演のアンナ・ランベはイヌイット系カナダ人。制作もイヌイットのクリエイターが手がけていて、文化の描写がきわめてナチュラルで豊か。演出されすぎない、でも“丁寧に切り取られた日常”が、飽きることなく心に残ります。
物も情報もあふれる暮らしよりも
ここにある“足りなさ”の中の不自由さにこそ
豊かさのヒントがあるのかもしれません。
一歩を踏み出したい人へ
この作品に大きなドラマチックな展開はない。
けれど、静かな決意や、目に見えない成長を積み重ねていく姿は、まさに私たち自身の人生にも重なる。
キャリアに迷ったとき。人間関係に悩んだとき。あるいは、ただ少し立ち止まりたい夜に。
『ここが世界の最北端』は、静かに寄り添い、そっと背中を押してくれるはずです。